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院長瓦版

(平成19年9月号)
「歯周病に効く薬」について考える

 私が歯科医師になった20数年前から患者さんに「歯槽膿漏(今では歯周病と言いますが)を治す良い薬はないんですか?」と今でも聞かれることがあります。毎回、毎回、歯周病の治療だと言われ、歯石を取ったり歯と歯肉の間を器械や小さな刃物でカリカリやられ、ちくちく痛いやら、しみるやらで、もっと能率よく効果的に歯周病の治療ができないのかと不思議に思う患者さんも多いことでしょう。

 細菌学の進歩でたくさんの感染症が薬で治せるようになりました。歯周病の原因になる菌の種類も、その菌に対する抗菌剤もすでに研究されています。ところがいざ人間の口の中で抗菌剤が効果を発揮するか、となるとそう簡単にはいきません。日本人のほとんどが「歯垢、プラーク」という単語をテレビの歯磨き剤のCMで見たり聞いたりしているはずです、歯垢は学術的には「バイオフィルム」と言われ、台所の流しのヌメリのようにベトベトとしたペリクルという物質です。歯周病菌やむし歯菌は自分たちでバイオフィルムを作り、その中でお互いに絡み合った状態で増殖します。つまり歯の周りや歯周ポケットの中に巣を作り、その周りをバイオフィルムというバリアで囲んで抗菌剤などから防御をしているわけです。

 歯磨きが上手な人は、歯ブラシでこのヌメヌメしたバイオフィルムを取り除けるので口の中の細菌も少なく、むし歯や歯周病にはなりません。歯磨きが下手だったり、めんどくさがって歯を磨かない人は、バイオフィルムがそのまま残って病気の原因菌が悪さをします。余談ですが、むし歯にならない人でも歯周病になる人がいたり、逆にむし歯はあるが歯肉は丈夫という人がいるのは、その人の口の中の細菌の種類が関係していて、もともと歯周病菌やむし歯菌に感染する環境(主に家庭環境)がなかった場合はあり得ることです。

 重症の歯周病でも、バイオフィルムの除去がしっかりできていれば、飲み薬(抗菌剤)で口の中の歯周病菌を抑えることはできます。患者さんはくたびれるでしょうが、1日で口の中の汚れを歯周ポケットの中まで徹底的に除去して、効果的な抗菌剤を1週間飲んでもらえば、体に害をなさないような数まで菌の数を減らす効果が期待できます。

 この方法は保険では認められていないため、大学病院で実験的治療としてやっているだけなので一般の歯科医院には普及していません。ただし来年の4月以降、藤本歯科医院が健康保険の指定を返上してしまえば、面倒な制約はなくなりますから、その患者さんの状況によっては抗菌剤を使う新しい治療法も検討してみようと思っています。

 もちろん一旦歯周病菌の数を減らしても、相変わらずきちんとした自己管理ができなければ、振り出しに戻ってしまうのは言うまでもありません。

 (おまけの一言)当院で健診等で口の中を掃除したら、リステリンのようなアルコール系のうがい薬で毎日まめにぶくぶくうがいをしていると、歯周病菌の数はある程度抑えられます。



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