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院長瓦版

(平成19年3月号)
今月は「咬む」と「噛む」についての話です。

 歯が全部そろっている人が、最初に食べ物を噛み潰す歯は第一大臼歯だと言われています。試しにご自分でやってみて下さい、前歯で噛み切った肉や野菜をそのまま前歯で細かくすり潰す人は奥歯がないか、奥歯に何か問題を抱えている人で、普通に歯があれば左右どちらかの奥から2番目あたりの歯で最初に噛み潰しているはずです。

 新潟大学から出された論文では、足の筋肉は20歳代に比べ、70歳代の人は60%に力が落ちているのに、第一大臼歯が全て残っている70歳代の人の咬む力は20歳代と比べても男性97%、女性74%、と足に比べ、力が衰えていません。

顎の筋肉は毎日食事をすることで、自然にきたえられているということでしょうか?

 それにしても男女の差が大きいのはなぜなのか私も気になるところですが、残念ながら論文には説明がありませんでした。皆さんで考えてみて下さい。

 良いことばかりではなく悲しいことに、上下どちらかの大臼歯が無くなり入れ歯になった場合は、咬む力が20歳代の三分の一に低下します。また上下両方とも入れ歯の場合と片方だけが入れ歯の場合では咬む力に差はなく、どちらも若い人の三分の一だそうです。つまり上下どちらかが入れ歯になったその時から、咬む力はドカンと落ちてしまうのです。

 しかし「咬む力が弱い」からといって「食べ物が噛めない」とは限りません。先ほどの論文では、「ご飯」「刺身」「こんにゃく」「ちくわ」といった食品は天然歯でも入れ歯でも90%以上の人が「噛める」と答えているそうで、懐石料理のような日本食を食べている分には、あまり不自由は感じないようです。これが「ビーフステーキ」「フランスパン」「酢だこ」となると入れ歯の半分の人が「噛めない」と答えるそうです。肉食、パン食の欧米でインプラント治療が盛んに行われる理由の一つはこれだと言われています。肉食人種は「歯が命」のようです。

 「よく噛むことはボケを防止する」とよく言われます。ここで面白いことに「噛む」と「咬む」の違いが出てきます。食事をするように軽く口を動かしながらカチカチ噛むと、脳に血液が多く流れ、脳の前の部分が活性化します。車の運転中眠気防止にガムを噛むのもこのためです。授業中眠くなったら口を大きく開けたり閉じたり、左右に動かしたりして下さい、すこし頭がスッキリしますから。(自然にあくびが出るのもこの原理?)

 ところが口を開かずに「ぎゅっと咬みしめる」と今度は逆に、脳の血流が悪くなり貧血状態になります。アゴにも頭にも悪い状態です。言葉遊びのようですが「噛む」と「咬む」とではずいぶん違いがあるようです。

 (以上、きちんとした論文を判り易く要約していますが、今話題の「あるある大辞典」のようなウソはありませんので、知り合いの方にも教えてあげて下さい。)



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