(平成17年7月号)
「咬んでも痛くない義歯」
咬んでも痛くない義歯があったら良いのに、と思っている患者さんはたくさんいると思います。逆に考えると、なぜ義歯で咬むと痛くなるのでしょう?
義歯を作る時にこの患者さんは、痛くなるなとか、安定しないだろうなとか、大体のところは分かります。上顎よりは下顎の方が痛くなる確立はずっと高く、上の歯は何本も残っているのに下の歯がない、しかも顎の力が強い患者さん(顔つきでいうとエラの張った人)は間違いなく義歯で苦労します。
他には、土手の部分が尖っていて上を覆う歯肉が薄い人、指の腹で上から力を入れて土手を押してみてください、これが痛いようなら、プラスチックでできた義歯を入れて痛くないわけがありません。
最後にわれわれがどうにもできない顎とは、まったく高さがない顎です。みごとに平ら、いや逆に窪みになっているような症例では、ただ義歯が乗っかっているだけのため、咬めばアチコチ義歯が動いて、粘膜(もう歯肉は失われ粘膜しか残っていません)が擦れて痛くなるわけです。こうなると咬む力が強い、弱いの問題ではなくなってしまいます。
今までは粘膜調整材という材料を使い、1ヶ月ごとに調整材を義歯に敷きなおしていました。ちょうどテレビのCMで入れ歯安定剤を使っている場面を想像してください。粘膜調整材の寿命はせいぜい2ヶ月でしょうか、硬くなって張替えが必要な頃には、相当汚れて不潔になっています、もちろん臭いも強くするようになります。
しかし最近、義歯の内側を安定して長期間弾力を持たせることのできる技術ができました。生体用シリコンと言って医科の分野で生体内で使うことのできるシリコンを直接義歯に貼り付ける方法です。変色、変質もなく義歯との接合がよく、変質、剥離に対してはメーカーが3年間保障をしているという優れものです。
早速、八千代市内の約10件の歯科医院の先生達と勉強会をしてみました。今まで同じ考えの材料はありましたが、接着剤を使うため、半年で義歯から剥がれて内部が汚染されてしまうのに比べ、画期的な技術ではないかと、出席されたどの先生も自分の医院で取り入れようと考えているようです。
義歯の見本が手に入れば、義歯でお困りの患者さんにお見せできるのですが、あと2.3週間はかかりそうです。また、シリコンの厚みと義歯のプラスチックの厚みが必要なので、義歯の厚み自体があまりない場合は作れません。
私なども以前から、「プラスチックじゃなくシリコンで作ればいいじゃない」と難しさも知らずに言うだけでしたが、やっとシリコンで粘膜を覆う義歯を作ることが可能になりました。残念ながら、今の日本の健康保険制度では取り入れられそうにはありません。
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